○国指定重要無形文化財 平成12年(2000年)12月27日指定
見付天神裸祭は、旧暦8月10日直前の土・日に、祭神・矢奈比売命(やなひめのみこと)が、遠江国総社・淡海国玉神社への渡御に伴う一連のまつりである。
渡御に先立ち、腰蓑を着けた裸の男達が見付地区内を練り歩き、見付天神拝殿で乱舞することから、「はだかまつり」と呼ばれている。祭事は、次の行事の順に行われる。
(1)祭事始め(大祭の6日前)
見付地区の清め、御欺\葉(みしば)おろしは、元宮神社の御神霊を榊に宿し、これを見付地内の13箇所に立て、町中を清める行事。
22時本殿にて榊が御先供に手渡され、神社を出発する。
(2)浜垢離(大祭3日前)
心身の清め、参加町内、参加者全ての人達を清める行事。
松原神事・海原神事・浜の清祓に続き海に入り心身を清め、小石12個・砂・海水を持ち帰る。
禊が終わると賑やかな直会「松原の宴」が始まる。
(3)御池の清祓(大祭前夜)境内の清め、見付天神社の境内、御池中央に榊が立てられ、御池の祓いが始まる。20時境内消灯中、宮司の祝詞とともに庭火が焚かれ、献餞が始まる。
(4)御大祭(第1日目)大祭
18時「子供連」が各町内、見付天神、総社での錬りを終えると、深夜の渡御を目指した「宵祭」の幕開けとなる。
(5)宵祭 20時
腰蓑姿の青年達による各町内互いの挨拶回りの後、裸達の練が見付の街道に展開される。21時 煙火一発の合図とともに、山車を先頭に「オイショ、オイショ」の掛け声で提灯を持ち町内を練り回す。町単位の祭組は、次々に合流しながら4つの大きな「梯団(ていだん)」を形成していき、要所で繰り広げられる擦れ合いの熱気が、街道全体を包み込んでいく。
(6)鬼踊り
23時、先ずは梯団となった西区(一番觸\)が堂入り。ここから「鬼踊り」が始まる。続いて西中区(二番觸\)、東中区、東区(三番觸\)が次々堂入りする。その後、〆切の元門車が榊を手に拝殿に練込み、祭は最高潮に達する。午前零時少し前、拝殿の奥では神輿渡御奉告祭が始まる。 既に午後九時からの御神霊遷御祭により神輿の前に奉っておいた神餞を撤し、神輿の周りには半紙に包んだ十\二個の石が置かれる。 この石は浜垢離の時に海水や浜砂と一緒に持ち帰った小石で、石の上に十\二支を書きそれぞれ十\二支の方角に配置される。 特殊神餞を供え、祝詞奏上、玉串奉奠が終わると、八鈴の儀に移る。神輿の天井から吊された八鈴から伸びている紐の先を、 七回、五回、三回と引いて振る。これを合図に、 御先供はそれぞれの道具を持ち、神官は触番に渡す榊を手に持ち、 共に西木戸から外へ抜け出て山神社へ向かう。
(7)山神社祭〜オワタリ
山神社前で庭火が焚かれ、神事が行われる。宮司が祝詞を奏上する中、 御先供が「一番觸\れ」と叫ぶと、待機していた白丁に腰蓑姿の若者が神官より一番觸\の紙片が付いた榊を受け取り、 鈴を振りながら「一番觸\れー」と連呼しつつ、西坂角に向かって参道を駆け下りる。 続いて同様に二番觸\が榊を受け取った直後、見付全域の灯火が消される。二番觸\れはやはり「二番觸\れー」を連呼しながら、 これは総社に向けて駆け下りる。祝詞が終わると三番觸\が出発する。 触番の出発を終えた宮司は、二本の松明に先導され拝殿前の石段まで神輿をお迎えする。
神輿は暗闇の中、鬼踊りの渦を押し分け外に出る。裸の一群もこれに続き、暗闇の見付街道を疾走し、総社を目指す。渡り終えた神輿は総社本殿に安置され、一斉に灯火も戻される。神輿を追ってきた裸達も、境内に腰蓑を納め、各会所へ散会する。
(8)還御祭(大祭2日目)
日中、総社・本殿祭、浦安の舞が奉納される。陽の傾く17時頃、還御の行列は要所でのお神酒献上、御旅所祭に向けスタートする。神輿の行列は、まず見付本通を西に取り、天王御旅所を折り返し、三本松御旅所を通って見付天神へ戻る。拝殿前で神輿は何十\回と振り上げられた後、拝殿に納められ、見付の街を舞台とした裸祭が幕引きとなる。
【出典】
見付天神裸祭保存会発行「はだかまつり」
磐田市教育委員会文化財課発行「見付天神裸祭」
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