磐田のお宝見聞帳

【文化元年（１８０４年）〜元治元年（１８６４年 ）】

　遠州見付（現磐田市）に生まれる。生家は見付宿の脇本陣隣の旅籠で、父の代から町役人を勤めていた。号は初め磐湖、のちに半香と改め、暁夢、暁斎とも号した。
　幼少の頃より絵を好み、文化１０年(１８１３年）頃から掛川藩の御用絵師で、谷文晃の門人の村松以弘（明和９年（１７７２年）〜天保１０年（１８３９年）に絵を学んだ。
　２０代から３０代にけて見付と江戸を行き来するほか、各地を遊歴し、文人と友交したのち、江戸に居住する。
　天保４年（１８３３年）と考えられる渡辺崋山との出会いは、半香の画業に最も大きな影響を与えた。
　この時、崋山は三河の田原に、蟄居中の身であったが、半香によせた信頼は厚く、彼に宛てた書簡の数も多い。半香は江戸で画会を開くなど、師を困窮から救おうと尽力した。
　濃淡墨を混えた水墨の山水画の遺品が多く、謹直で緻密な描写の中に静謐で清々しい画趣を作り出している。